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2026.08.13|コラム

1894年の特許が、トライクを変えた

2026年モデルで、リアの仕組みが丸ごと変わりました

2026年モデル ハーレーダビッドソン ロードグライド3

ハーレーダビッドソンがファクトリー製の3輪車を始めたのは2009年です。2026年モデルは、それ以降で最大の設計変更を受けました。

ハンドルをこじられる、という問題

これまでのトライクは、左右の後輪が1本の車軸でつながっていました。ライブアクスルと呼ばれる構造です。

この形式では、片方の車輪が段差に乗ると、その動きが車軸を通じてもう片方にも伝わります。車体が左右に揺すられる、いわゆる「バンプロール」です。路面の荒れたところでは、この揺れがハンドルに返ってきます。従来型の試乗記には、段差でリアが跳ね、ハンドルをこじられるという指摘が残っています。

1894年、フランス

2026年モデルが採用したのは、「ド・ディオン式」と呼ばれる方式です。

名前の由来は、フランスの自動車メーカード・ディオン・ブートン社の創業者、ジュール=アルベール・ド・ディオン伯爵。ただし実際に考案したのは、共同創業者のシャルル・トレパルドゥでした。特許は1894年。当時の対象は、蒸気自動車です。

130年以上前の設計が、いまハーレーのトライクを直しています。

デフを、車体側に固定する

この方式の要点は、デファレンシャルをサスペンションではなく車体側に固定してしまうことにあります。

左右の車輪をつなぐアクスル自体は残りますが、その中に駆動軸は通りません。動力はデフから左右2本のハーフシャフトを通り、それぞれ内側と外側にCVジョイントを持って車輪へ届きます。ハーレーはさらに、ファイナルのベルトドライブ・スプロケットもアクスルからデフ側へ移しました。

アクスルはワットリンクで常に中央に保たれ、スタビライザーバーがコーナリング時のロールを抑えます。

ハーレーダビッドソン公式による新型リアサスペンションの解説(日本語字幕あり/2分53秒)
リアホイールトラベル2.3インチ → 5.0インチ(117%増)
バネ下重量約68ポンド(約31kg)軽減
リアトレッド1.5インチ拡大
ホイールベース1.6インチ延長
ホイールナット4本 → 5本
ベルト交換の作業時間5.3時間 → 3.6時間

ホイールトラベルが2倍以上になったことで、段差や穴を吸収できるようになりました。ベルト交換が1.7時間短縮されているのは、スプロケットがデフ側に移った副産物です。

リバース用モーターが消えた

バネ下重量が68ポンドも減った理由のひとつは、後退の方式変更です。従来はリアアクスルに後退専用の電動モーターが載っていました。2026年モデルはエンジンのスターターモーターを流用する方式に変わり、専用モーターそのものが不要になりました。

ただし制約もあります。エンジン始動中のみ作動し、1回の作動は20秒まで。手順はタッチスクリーンに表示されます。

要は、揺すられなくなった

バネ下が軽くなると、サスペンションは路面に追従しやすくなります。ハーレーはこの余裕を使って、バネとダンパーをより柔らかい設定に振っています。

デイトナでの試乗では、段差をなめらかに越え、突き上げがはるかに少ないと評価されています。コーナーでも安定して接地しているとのことでした。一方で、リアトレッドが広いため、二輪から乗り換えると慣れが必要という指摘も出ています。

数字の話に見えますが、要は揺すられなくなったということです。トライクを選ぶ理由が、足つきや安定性だけではなくなりつつあります。

※ 新型リアサスペンションはロードグライド3、ストリートグライド3 リミテッド、CVO ストリートグライド3 リミテッドの3機種に採用されています。なお、2015年モデルから続いていたフリーウィーラーは、2026年ラインナップから外れています。数値および動画は米ハーレーダビッドソン社の発表・公式素材によるものです。


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