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2026.08.12|コラム

勝ちすぎた一台

FTR750と、FTRという名前の話

インディアンモーターサイクル FTR

2026年のアメリカン・フラットトラックのグリッドに、インディアンモーターサイクルの姿はありません。

135戦101勝

2016年末に投入されたFTR750は、翌2017年から最高峰クラスの王座を一度も譲りませんでした。7年連続です。

135戦で101勝、勝率75%。表彰台に上がった率は96%に達します。ほとんど負けなかった、という言い方でも足りないほどの数字です。1950年代のインディアンのレース部隊が名乗った「レッキングクルー」の呼び名が、そのまま現代のチームに引き継がれました。

規則が、少しずつ変わっていった

主催団体のAFTは2019年、市販車のエンジンだけで争う「Production Twins」クラスを新設します。2022年には両クラスの統合を発表し、レース専用エンジンには32mmのリストリクターと11,500回転の上限を課しました。2023年に2つのクラスは統合され、そして2025年、最高峰クラスは市販車ベースのエンジンのみとなります。

2024年8月16日、AFTが公表した2025年の承認エンジン一覧に、レース専用設計のFTR750の名前はありませんでした。

締め出された、わけではない

ここは誤解されやすいところです。同じ一覧には、インディアンの983cc Vツインが載っています。ハーレーダビッドソン、ヤマハ、KTM、ホンダ、ロイヤルエンフィールドと並んで。

市販車をベースにした新しいレーサーを仕立てれば、参戦できたということです。インディアンは、そうしないことを選びました。

三日後の発表と、最後の一戦

一覧が出た三日後、2024年8月19日。インディアンは「一つの時代の終わり」と題した文書を発表します。中身は7年間の戦績を讃えるもので、今後については何も書かれていませんでした。

最後のレースは同年9月14日、ミズーリ州。ジャレッド・ミーズが勝ち、自身10回目の王座を決めました。史上最多の記録です。その三日後、彼は引退を表明しました。

そして同じころ、市販車のFTRも生産に幕が引かれています。レース専用機と、その名を受け継いだ市販車が、ほとんど同じ時期に役目を終えました。

最後の年に

2024年、FTRはゴーグルやアパレルで知られる100%とのコラボレーションを発表しています。生産が終わる、その年のことでした。

2024 FTR × 100% R Carbon(インディアンモーターサイクル公式/約30秒)

記録だけが残る

強すぎるものに枷がはめられるのは、レースの世界では珍しいことではありません。それが競技を面白くもします。実際、2025年の王者はヤマハに乗るダラス・ダニエルズで、2026年にはハーレーダビッドソンが公式パートナーとして戻ってきました。参加するメーカーは増えています。

それでも、7年間ひとつも落とさなかったという事実は残ります。135戦101勝という数字も。ダートの上で何が起きていたかは、記録のほうが雄弁です。

※ 戦績・日付・技術規則は、インディアンモーターサイクルおよびAmerican Flat Trackの公表資料によるものです。画像・動画はインディアンモーターサイクル公式素材です。


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